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BLOOMING EAST 勉強会「OUR MUSIC」
第3回「公共になってみる」レポート

BLOOMING EAST「勉強会」とは

私たちは様々なかたちで日々音楽に触れています。そんな普段何気なく耳にする音や音楽が、ふとした場所で聴こえてきたときに風が抜けるような心地よさを感じたことはありませんか?

「音楽」には、そんなふうに空間そのものの温度や、その場に居合わせた人々の体温がほんのりと上がってしまうような力があるような気がします。

BLOOMING EAST勉強会「OUR MUSIC」では、そんな「音楽」や「音」がもってる本来の響きと「公共」との関係について、丁寧に考えを巡らせていきます。そもそも、音と音楽の違いってなんだろうとか、耳に残る音楽や聞き流してしまう音の差異や区別はどうやって生まれるのかとか、そんな根っこのことを考える勉強会です。(詳しい開催日程などは関連イベントをご覧ください。)

第3回「公共になってみる」

●アーティストとの調査報告

はじめに、勉強会と並行して進めているアーティストとの東東京での調査について、報告がありました。これまで「BLOOMING EAST」で実験してきたような事象に基づき、様々な取り組みをされている音楽家と「公共空間における音の可能性」について対話し、対話の中で生まれてきた彼らの独自の視点から「東東京」の場の記憶や歴史と紐づき、土地の空気を取り込みながら、彼らとともに調査を開始しています。今回一緒に調査しているのは、コムアイ(水曜日のカンパネラ)さんと寺尾紗穂さんです。

コムアイさんとは、知らない場所にいる時に居心地の良さを感じる個人的な経験から、東東京の外国人コミュニティに興味をもち、さまざまな国から来た人々にインタビューをおこないました。また、寺尾紗穂さんとは、東京のわらべうたや戦災孤児の歴史に興味を持ち、東東京の教会や施設を訪問しました。リサーチは今後も継続的に続いていくようです。

それぞれの初めての調査の様子をカルチャーニュースサイト「CINRA.NET」とコラボし、レポートしています。詳しくはこちらをご覧ください。

BLOOMING EAST × コムアイ(水曜日のカンパネラ) × CINRA.NET
https://www.cinra.net/report/201803-komi

BLOOMING EAST × 寺尾紗穂 × CINRA.NET
https://www.cinra.net/report/201803-teraosaho

●公共とは?

次に、「公共」という言葉が指す内容について、集まったメンバーでそれぞれの考えを紙に書き、発表しました。誰もが自由にアクセスできる開かれた場、という共通認識はあるものの、その成り立ち方については、さまざまな意見がありました。中でも多く出てきたキーワードが、一見その対概念に見える「私」と、公共をさらに二つに分けた「公」と「共」です。それぞれの意見を出し終えた後も議論が続き、上からいきなり「公」の規範を押し付けるのではなく、顔が見える「私」からはじまり、ちいさな「共」を増やしていくことの重要性などが語られました。

<事例:公共R不動産、The Lowline>
「公共」へのユニークなアプローチをおこなっている事例として、
公共R不動産が出している本『RePUBLIC 公共空間のイノベーション』を読んだり、ニューヨークで行われている緑化プロジェクト「The Lowline」のプロモーションビデオを見たりしました。

●音楽における「公」と「私」

ここでは、いったん話を音楽に戻して、民族音楽学や音楽社会学の研究において、公的なものと私的なものの関係を考える上で興味深い概念をいくつか提示しました。まず、音楽的な経験の基礎として、音楽が鳴り響く空間において、その場に居合わせる人々の時間の流れがその場で統合されて拡散していくことを確認しました。また、音声を使ったコミュニケーションでは、声の重なり方や聴き方が文化によって異なり、それぞれに他者と居合わせている感覚も独自のものであるとする研究を参照しました。さらに、音楽と社会との関係においては、一見ごく私的な音楽の場面においても、音楽を媒介にさまざまな人やモノやメディアが結びついており、音楽と社会は共に互いを構成しあっていることなども確認しました。

●公共になってみる

最後に、先日開催したトッピングイーストの別プログラム「ほくさい音楽博」で詩人の志人さんがおこなった、自分ではない何者かになって作詞をするワークショップからヒントを得て、メンバーそれぞれが思い浮かべる理想の公共空間に自分がなりきって文章を書いてみるという実験的な試みをしてみました。カフェ、公園、ベンチ、路上、駅、河川敷、屋根…など、多種多様な建物や空間が出てきました。空間そのものになりきってみることによって、その配置や仕組みがそこに居合わせる人やモノにさまざまな作用をもたらしていることに改めて気付かされるような、何とも不思議な時間でした。

  • 石橋 鼓太郎(BLOOMING EAST プロジェクトメンバー)

    東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修士課程。専門はアートマネジメント。多様な人々が参加する音楽の場おける相互行為の様態に興味を持ち、研究・企画運営・演奏を横断しながらさまざまな実践を続けている。2012年度より、足立区千住地域を中心に展開するアートプロジェクト「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」の一企画「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」の運営を担当している。2016年アカンサス音楽賞受賞。