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【インターンレポート】『隅田側に立つ』を通して考えた、私にとっての「公共性と公益性」三宅真由

NPO法人トッピングイーストでは、インターン生に「現在自分が考える”公共性”と”公益性”」をテーマにレポートを書いていただきました。今回は2020年7月よりインターンに参加してくれている三宅真由さんのレポートです。三宅さんは特に『隅田川怒涛』ではリサーチやマニュアル制作・現場運営を、『隅田側に立つ』では外装飾を担当しました。

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 今までの人生を振り返ると、自分は”公共空間”についてあまり意識したことがなかった。しかし、改めて目を向けてみると、何気なく利用している私たちの生活圏は公共空間で溢れていた。例えば道路や公園、隅田川などの水辺空間、図書館や学校などの施設など。
 今回、私たちインターンが企画・運営した『隅田側に立つ』という展示で、私は隅田川の水辺空間の利活用について焦点を絞り調査やトークイベントを行った。その際に今まであまり目を向けてこなかった公共空間について考えてみることで、改めて気づいたことがあった。

 まずは、公共空間の利用に関して一般の人々にはあまり馴染みがないということが大きな発見であった。隅田川周辺ではイベントやプロジェクトなど、豊かな水辺空間にするための取り組みが多く行われているのだが、あまり広く知られているとは言いがたいと感じた。トークイベントに参加して下さったお客さんからも「そのような取り組みがあるなんて知らなかった」との声が多かった。ただ、「知りたかった」との声も多く、関心が無いのではない。水辺空間の利活用についてのトークイベントを行った際にも、「隅田川でどんな事がしてみたいか」という質問をお客さんに投げかけてみると、「川の中にやぐらを建てたい」「プロジェクションマッピングを投影してみたい」「川の前にテントを張って、寝泊りしてみたい」など実に多くのアイデアがでてきたのだ。水辺空間は人々にとって需要が高いことが分かった。
 また、公共空間をより良くするための取り組みによって弊害が生まれてしまう場合があることにも改めて気づかされた。たとえば隅田川に近年新たに造られたスーパー堤防は、河川堤防の高さに対して堤体の幅が長くなだらかになっているため、水害を防ぎ親水性も高くなっている。しかし、その開発に伴って周辺に住む人々が泣く泣く立ち退かなくてはならないという残酷な一面もあるのだということを、堤防についてリサーチする際に発見した。川を利用する人々にとっては豊かになる公益な面をもつ一方で、誰かが不便な思いをしてしまうということも忘れてはならないと感じた。
 そして、『隅田側に立つ』という展示が、普段交わらないような様々な人々のコミュニケーションの場になり得ていたこと、改めて隅田川界隈という地域の魅力を知ってもらうことで新たな価値観や視野が広がる場になっていたことを実感できた。実際に会場では私たちインターンだけでなく、トークゲストやサポーター、来場者同士の交流も多く生まれていた。そして、隅田川界隈について知ったことや自身の経験やエピソードを通して、これからの隅田川ついて想像していた。このような場を提供できるのは公共空間ならではだと、強く感じた。

 公共空間は至る所に存在しており、私たちの生活圏の中でも多く利用される場所である。しかし実際”なんとなく利用しているだけ”という人は多いのではないだろうか。当たり前にある空間で、決して私有地のように自分1人だけが独占することはできないけれど、利用することはできる。そしてそのような公共空間は、みんなでお金を出し合って整備されている。このような場所がせっかく用意されているというのに、多くの人にあまり意識されていないことは、とても勿体ないように感じる。公共空間も手続きを経れば市民が利用できるということが知られていない、あるいはやりたいことを実現する際に、公共空間でできるという発想が持たれにくいのが現状ではないか。実はもっとやりたいこと、もっとできることがあるのではないか。また、公共性を求めることで公益性だけでなく、問題や課題が生まれる場合があるということも知っておくべきではないか。
私たちが公共空間を意識し、知見を得、意見してみることで何か変わっていくのではないか。

 公共空間は誰のものでもなく、文字通りみんなの空間である。家や職場以外で都市の中に生活を豊かにする場所があるだけで、街の価値も上がり、公益につながる。そのような公共空間にもっと目を向けて、どのような場にしたいのか検討することで、私たちの未来の街の可能性は大きく広がるのではないかと思う。
 このことは、公共空間に限らない。あらゆる公共性も公益性もみんなの力で生まれるもので、みんなの意識次第で変化していくものだと思う。私たち一人ひとりが、公共に興味を持ち意見を投げかけることが公益につながるのだと、『隅田側に立つ』を通じて改めて実感した。

↑三宅さんは、渡邉陽一さん(公益財団法人東京都公園協会 公園事業部 事業開発課長)(写真左)、大川原雄一郎さん(東京都 建設局 河川部 計画課 課長代理(河川利用促進担当))(写真左から2番目)をゲストにお迎えし、「すき×隅田川」をテーマにトークイベントをおこないました。

↑三宅さん(写真右下)は外装飾担当として、会場の外に設置する幕やのぼりの準備と設置をおこないました。