「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」 和田永レポート[2/28-3/1]

みなさん、こんにちは。和田永です。

台所で回る換気扇、ゆっくりと回って止まっていく瞬間に、蛍光灯のチカチカと奇妙に噛み合い、次の瞬間、逆向きに回ったように見えることがあります。羽根の回転のリズムと、チカチカしている蛍光灯のリズムが合奏することで、この現象は生み出されています。これは隠された音楽かもしれません!そんな日々の泡々の中で、「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」は着々と次の歩みに向けて歩き始めました。

つい先日の5月23日からは初台のインターコミュニケーションセンター【ICC】にて、「蟹足電輪塔」の試作機の展示がスタートしました。(入場無料。午前11時~午後6時開館。来年3月6日迄。)

「蟹足電輪塔」はこのプロジェクトが目指す「博覧祭」の象徴的な存在として構想が始まった塔です。元々はただの夢物語で・・

地面から巨大な蟹の足が生えてきて、ピカピカと光り始める

ラジオを持って近づいていくと、そこから発せられる光(電波)によってちゅぴんちゅぴんと珍妙な音楽が奏でられる

という風景から始まっています。ここから発展して、電輪塔が複数本そびえ、それぞれから異なる電磁気的なノイズを発することで、ラジオを持って人々が塔に近づいたり遠ざかったり練り歩いたりチューニング・ダイヤルを回すことで自由に空間で音をミックスする巨大なリズム・マシンとして機能することを目指しています。電輪塔とラジオがひとつの大きな楽器で、送信者と受信者がともに音楽をジョッキーしていきます。

《蟹足電輪塔の心象風景》

現在展開中の展示では、ブラウン管テレビとフラッシュ、ラジオを用いて、テレビやフラッシュのリズミカルな光のパターンを周りに置かれたラジオ達が音に変えるという形で、奥まった暗がりの部屋で怪しげな音楽実験が行われています。空気中に飛び交っている電子達が奏でる響き(振動)を是非、覗いてみてください。

そして、更にこの構想を本格的に実現させるにあたっては、アンテナや電波に精通している人々とのコラボレーションが必要不可欠です。アンテナが好きすぎて家の屋根にアンテナを沢山立てているという方や、その道に詳しいプロ、興味のある方は、是非ご連絡ください!!!!

⇒TOPPING EAST コンタクト

森翔太さんが見せてくれたビジョン。それは、「無駄を楽しむ」。

森さんがつくる作品は、カーテンレールとiPhoneなど、既存のものを組み合わせることによって「無駄にカッコイイ」装置や身体的動作を生み出します。無駄を楽しむ・・というよりも、むしろ無駄こそ楽しさにとって必要不可欠な要素なのかもしれません。

楠見清さんが見せてくれたビジョン。それは、「うち捨てられたものとの対話を通して建造されるジャンク・モノリス(それに触れた人は進化する)」。

役割を終えたエレクトロニクス(家電)に隠された楽しさをいかに発見・抽出できるか、そこから何が生まれるか、このプロジェクトが探る芯であります。

最終週は更に、何かに引き寄せられたのか、謎のおじいちゃんが様々な装置を持って登場。あらゆる素材をスピーカーにしてしまう、スピーカーそのものを演奏するという遊び心満点のショーを突然展開。楽器の繋がった振動する手のひらサイズの素子を色んなものにくっつけることで、おいしい牛乳はまろやかな音に、さんまの発砲スチロールは弾け飛ぶふくよかな音に、コンビニ鍋焼きうどんの銀の皿は金属的な陽気な音に、振動する物体によって様々に音色が変化したのであります。

大根を喘がせるという「セクハラ・インターフェース」の市原えつこさんも巫女姿で登場。笑顔で大根をさすりながら、「エレクトロ”エロ”ニコス・ファンタスティコス!」と別の解釈を加えて、男根を模したアンテナをつくりたい、と語っていました。しかし・・小さな子ども達も参加しているプロジェクト故、実際にそれをつくるかどうかは・・悩ましいところです。ただし豊作と子孫繁栄は祭りにとって重要な要素!。

「無駄」や「ノイズ」に溢れているからこそ、うち捨てられてしまったテクノロジー達ですが、それらと熱心に対話していて気づくのは、そのものが持っている根本的な仕組みの面白さです。そしてそこには、色んな暗号が満ち溢れています。その暗号の正体は言うならば「音の素(おとのもと)」。解読できた時にだけ、耳へと届き鼓膜を振るわせます。

そうして様々に姿・形を変えていく「振動」を感じていると、つまりは僕らは振動を見たり聞いたり触ったりしていて・・全ては振動でできている、いや全ては振動そのものなのではないか、ということに気づかされていきます。もはや存在そのものが交響音楽のようなもの・・と思う今日この頃です。

そんなことに気づかせてくれるテクノロジーやメディアは、自然界の秘密と通じるための通信装置と言えるかもしれません。とすれば!それらを使って奏でられる音楽は振動への祝福の音楽になるのではないかと思っています。

「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」は、そんな対話と交流、実験・発見・合奏の場を通じて、取扱説明書を脱皮した新たな振動装置=楽器、ジャンク・モノリス、祝祭をつくろうと着々と歩み続けています。

今後の展開をお楽しみに!!!!

-和田永-

撮影:高島圭史

  • 和田 永

    1987年東京生まれ。物心ついた頃に、ブラウン管テレビが埋め込まれた巨大な蟹の足の塔がそびえ立っている場所で、音楽の祭典が待っていると確信する。しかしある時、地球にはそんな場所はないと友人に教えられ、自分でつくるしかないと今に至る。大学在籍中よりアーティスト/ミュージシャンとして音楽と美術の間の領域で活動を開始。オープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するバンド『Open Reel Ensemble』を結成してライブ活動を展開する傍ら、ブラウン管テレビを楽器として演奏するパフォーマンス『Braun Tube Jazz Band』にて第13回メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞。各国でライブや展示活動を展開。ISSEY MIYAKEのパリコレクションでは、現在までに7回に渡り音楽を担当している。2015年よりあらゆる人々を巻き込みながら古い電化製品を電子楽器として蘇生させ合奏する祭典を目指すプロジェクト『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』を始動させて取り組む。そんな場所はないと教えてくれた友人に最近偶然再会。まだそんなことやってるのかと驚嘆される。