「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」 和田永レポート[2/15-19]

エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月15日

高速道路に並びそびえる照明灯の球が、ある時光る卵に見えたことはあるでしょうか。それこそ、「ニコスの卵」です!
滞在2日目。トークゲストとして放送作家の倉本美津留さんがご来訪!倉本さんとはテレビ番組「アーホ!」にオープンリールテープレコーダーを楽器として演奏するグループ「Open Reel Ensemble」として呼んで頂いた縁もあり、また放送作家でありながらミュージシャンという側面も持ち合わせていることもあって、新たな刺激・触発を得るため、来訪頂く嬉しい運びとなりました。すると、予感は的中。倉本さんの口からは現在の視界には無かった数々のファンタスティコスな着想が際限なく溢れ出てきて、ちょっと心が騒然となりました。。このざわめきを言葉にするのはとても難しいのですが、これはプロジェクトの渦の中に、倉本さんならではの原液を今後注入して頂きたいと確信しました。今後とも引き続き、究極の異種交配をしたいお相手です。

蟹の足の形をした電波塔、通称「蟹足電輪塔」を建造したい、でも何故蟹の足なのか・・それはあまりに主観的すぎるためデザインに迷いが生じていると告白してみたところ、「そう思うなら何かあるんでしょ。蟹の足ならもっと蟹の足っぽくして、蟹の足なので10本のアンテナとして地面から生やしたり、蟹バサミもあるべき!」という力強い言葉を頂き、これはもう蟹の足をとことん突き詰めるしかないというメンタルになってきています。

そんな中、子ども達の遊び場とも化している拠点では「なんだこれ〜?」とそもそもの使い方を知らないことで数々の「ニコスの種」が空間に放出されています。電話を並べていじっている姿はもう電話機を演奏しているようにしか見えないですし、かつての室内テレビアンテナは、お互いに空間で音をミックスするためのアンテナ帽になりそうな予感です。

そして来訪者からは新たにラジカセや懐中電灯、二層式洗濯機などの「差し入れ」が届く予定で、引き続き探求が加速しそうです。

エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月16日

この日は朝から近所の釣り具屋さんのいっちゃんさんが登場。ヘッド取りつけ式懐中電灯や、魚をおびき寄せるために蛍光ルアーに蓄光させるためのフィッシング・フラッシュを「差し入れ」として頂きました。

このフィッシング・フラッシュ、ボタンを押すと電気が溜まっては放電し、瞬間的に強い光を発するという代物なのですが、この放電を、あるものと組み合わせることで、非常にファンタスティコスな音が生まれることがわかってきました。ここから発展し、写真撮影用のフラッシュも取り込んでいくことで、新たな楽器が創造できると踏んでいます。
釣具屋のいっちゃんさんに心より感謝です。

そしてこのスペース、平日も「ニコス」の香りを嗅ぎつけた様々な人たちが訪れます。先日は新装オープンしたカフェと間違えて若者2人が入ってきたのですが、そこに陳列するかつての家電達に食らいつき「空腹を満たすつもりが、好奇心が満たされてしまった。。」とつぶやいていました。

オシロスコープに異様な興味を示していた来訪者の佐々木さんは、モグラのモグタンのお話を紙に描き、壁に貼っていってくれました。この物語が非常に印象的だったので、ここで紹介したいと思います。

【モグタンの物語】
ネズミとの生存競争に破れ、地中に潜ることになったモグラのモグタン。彼は長い間、地中で風を知らずに育ったのだが、ある時好奇心から地上に這い出て走ってみたことで風を知った。そして更に風を感じるために手に入れたもの、それが人間のドライヤーであった!彼はドライヤーを使えば、土の中でも風の踊りを巻き起こせるはずだと気づく!

エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月17日

滞在が始まって早くも1週間が経過。生まれるものも受け取るものも濃密な日々で頭が煮えています。
そんな中、誤読と妄想渦巻く数々のエピソードや噂(ニコス・ストーリー)が僕のところには伝わってきました。これらは事実無根のものもありますが、音楽や楽器をつくる上では、この上ないインスピレーションです!
特に印象的だったものを折角なので紹介したいと思います。

・黒板消し清掃器の話
小学校の教室に必ずある黒板消しのカス吸い取り器。たかがカスを吸い取るだけのために何故あんなにもうるさいのか?けれどもあの騒音故に、立ち上がりの音も含めて、最高に好きだった。(Eさん)

・日米無線電機商会のおじさん、知人のDJの話
日米無線のおじさんは、回転するモーターにセロテープをぴっとつけてじっと見つめるだけで回転数がわかるらしい。(Yさん)
知人のDJは、レコードの溝を見ただけで盛り上がりどころがわかるらしい。(Hさん)

・切れかけの蛍光灯の話
蛍光灯の最期、カチカチという点滅は本当にランダムでひとつとして同じものはない。最期の最期に個性が光り始めるのだ。(Mさん)

・レコードはフリスビーの話
放送室にあったレコードをフリスビーにして遊んで全部割った。(Eさん)

・ある遊園地の話
何も起こらない秘密基地を模したスイッチだけの部屋があった。カチカチしながら想像力だけで楽しむ部屋で1日中遊んだ。(Hさん)

・リコーダーとレコーダーの話、笛のお墓の部族の話
リコーダーは鳥の声を真似するレコーダーが語源らしい。風による摩擦が笛の本質で、どうやら地球上の何処かには、お墓が笛になっていて、風が吹くと鳴り、その音が聞こえる範囲が村、という部族がいるらしい。(Iさん)

・スライド・プロジェクターの話
何枚ものスライド写真を順番に見せていくスライド・プロジェクターで物語を聞かせてくれるおじいさんがいた。その人は、同じ写真だけれども、毎回セットする順番を入れ替えることで、物語を少しづつ変えた。(Sさん)

・ラウド・スピーカーの話
アジアや中東の地域で使われるラウド・スピーカー。音が割れまくっているのは、電気という魔術によってスピリットがアンプリファイされればされるほど天に届くという感覚があるかららしい。(Oさん)

・飛行機の勘違いの話
かつてメラネシアの未開の地に、空を飛ぶ飛行機が神様の乗り物であると勘違いした部族がいたらしい。彼らは通り過ぎる飛行機に向かってこう歌うらしい。「何故、私たちを見捨てて飛んでいってしまうの?」(Yさん)

最後に僕のニコス・ストーリーを。
・子どもの頃好きだったテレビのチャンネル。それは・・真っ暗な画面に時々白い筋が入る7チャンネル。真っ暗な部屋で7チャンネルをつけると、流星のように見えた。

この他にも沢山の物語を耳にしているのですが、この辺で!

エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月19日

今日の最大成果は「蟹足電輪塔(蟹の足の形をした怪電波を放出する塔)」の片鱗が見えてきたことです。
広場の中央に蟹の足の形をして高くそびえ立っている電波塔があり、その周りにも何本も生え、そこに人々が近づいたり遠ざかったりしている・・というおぼろげなビジョンが揺らめいているのですが、まずは簡単な試作を制作しています。
今日はその試作から、試験的に怪電波が発せられました。空間を飛び交う波は、近くに聳え立つスカイツリーから発せられる公共電波ともぶつかり合い、不確定性に満ちた交響電波を生み出そうとしています。

つづく!

ー和田永ー

  • 和田 永

    1987年東京生まれ。物心ついた頃に、ブラウン管テレビが埋め込まれた巨大な蟹の足の塔がそびえ立っている場所で、音楽の祭典が待っていると確信する。しかしある時、地球にはそんな場所はないと友人に教えられ、自分でつくるしかないと今に至る。大学在籍中よりアーティスト/ミュージシャンとして音楽と美術の間の領域で活動を開始。オープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するバンド『Open Reel Ensemble』を結成してライブ活動を展開する傍ら、ブラウン管テレビを楽器として演奏するパフォーマンス『Braun Tube Jazz Band』にて第13回メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞。各国でライブや展示活動を展開。ISSEY MIYAKEのパリコレクションでは、現在までに7回に渡り音楽を担当している。2015年よりあらゆる人々を巻き込みながら古い電化製品を電子楽器として蘇生させ合奏する祭典を目指すプロジェクト『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』を始動させて取り組む。そんな場所はないと教えてくれた友人に最近偶然再会。まだそんなことやってるのかと驚嘆される。