「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」 和田永レポート[2/11-14]

エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月11日

滞在開始に向けて助走。家電蒐集家・家電考古学者の松崎順一さんと巡る廃品回収ツアーに同行させて頂きました!主に巡ったのは広大な敷地に大量の廃家電が集まる業者の施設。次から次へと運ばれてくるブラウン管テレビや洗濯機、電子レンジが解体され割られ、材料別に分かれていきます。松崎さんはこうした場所で、解体寸前の家電達を発掘しては、それを蘇生させるという活動を長年続けています。

松崎さん曰く、「この場所は新しく終わる者達の墓場。最末端であり、ある種の最先端。文明社会の裏。」

かつてドイツの児童文学作家のミヒャエル・エンデが絵に描いた、機械が廃墟となって永遠に続いていく「文明砂漠」がまさにそこに広がっているようでした。
そして面白いのは、ここでは元々の機能としての価値は全く失われ、例えば何か欲しい場合は、業者のおじさんが計りにかけて単純な「重さ」(= 地球に落ちようとするエネルギー)として価値を計って、値段をつけていくところです。

ちなみにここには捨てられたCDやレコードも山積みになっていて、その通称「メディアの墓場」から松崎さんは音楽をチョイス、回収に向かう時の車内のBGMは全てこうして発掘した音楽を聞いているらしいです。中には見知らぬ誰かが既に選曲したCD-Rもあるらしく、それがまた面白いとのマニアックぶり。
松崎さんにとっては、そうした過程でレコードについた傷すらも、指紋のように刻まれたひとつの音楽なのかもしれません。

エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月13日

オープン前の拠点にお引っ越し。集めたニクス達を並べながら部屋の準備に追われます。先週末までほくさい音楽博だった部屋が、徐々に怪しい電磁波が飛び交う秘密基地のようになっています。

そんな拠点に現代美術家である遠藤一郎さんの「未来へ号」も登場(彼はこの「未来へ号」に住んでいる!)。彼が購入してスペースに困っているという幾つかの機材もお借りすることになりました。

ちなみに、未来へ号の車内には電気炊飯器が設置されているのですが、聞いてみたところ、電力が足りないらしく、「保温機能」を活用させることで米を発酵させて甘酒をつくっているらしく、これでつくる甘酒は遠藤さんが言うには「超美味しい。え、っていうぐらい美味しい」そうです。未来へ号の炊飯器の保温機能、恐るべしです。是非一度飲んでみたいもの!

そして集まった機材達の動作チェック。動作はしなくとも、その発想に心くすぐられるアイテム達が。例えば電話番号検索器。これはまだインターネットが発展する黎明期に使われていたものだそうで、名前を検索すると電話回線を通じてNTTに蓄積されたデータにアクセス!電話番号の情報が引き出せるというものだそうです。個人情報保護法が施行された今となっては相当まずい代物。ただ、好きなあの娘の電話番号をこのテクノロジーを使って検索しようとしていたとしても、まずそもそもこの機械をゲットするという高いハードル、そして世帯主の名前で登録されていたはずなので、両親の名前を知るというハードルが課せられていたことが想像できます!
エレクトロニコス・レポート  和田日記:2月14日

「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」滞在制作篇がいよいよ始まりました。初日からご来訪頂いたみなさま、ありがとうございます!
役割を終えたかつてのエレクトロニクスが取扱説明書を脱皮し、新たな生命力を宿した姿「エレクトロニコス(=楽器)」に変容していく可能性を探る旅が始まりました。初日から様々な来訪者との「ニコスの種」の交換が加速しています。

今回、テクニカルで参加頂いている1人、山元史朗さんのご協力を得ながら、早速様々な実験を開始。換気扇の裏側から光を当てると、羽が回転しながら光を遮る様子から、その光の点滅をそのままソーラーパネルで拾ってギターアンプに繋ぎ、回転と羽による光と影の明滅 = 電気の波 = 音の波をつくり出す「換気扇サイザー」を試みています。更にOHPとドッキングさせたり、来訪者からの新たな発想が加わることで、換気扇から「音の素(オトノモト)」をつくり、回転する影が空間に映写されながら音とともにダンスするような換気扇楽器のイメージが早速、現実味を帯びてきました。

黒電話の中も開けてみると、小さな2つの大きさの違うベルが交互に鳴ることであの独特の着信音が生まれていることが判明!それを現代テクノロジコス(コンピュータ)と繋ぐことで、受話器をとったり置いたり、ダイアルを回す動作で演奏ができないか試みています。ある機器に隠された科学的な音の鳴る仕組みを解明しつつ、それらを積極的に演奏できるように拡張していく練金的作業が続けられています。

そして、トークゲストにはニコニコ学会βの主催、江渡浩一郎さんがご登壇。大学などの研究機関に属していない「野生の研究者」も加わり発見したことを発表し合うという交流創造の先駆的な活動を行っています。ビッグでダイナミックな情報が渦を巻く時代、ネットの可能性と人と人とのリアリティの場が相互作用しながら高まる可能性、そして独創と共創をバランス良く保つために必要なこととは何か!?それは、共鳴した人々が集めていくための「考え方」や「概念」なのではないか!という重要な視点を一気に頂くことができました。

そんなことを話しているうちに、近所の鉄工所(吉成さん)に造作を相談していた電輪塔(怪電波を飛ばしてリズムをつくるための塔)の試作も登場。気分が高まってきました。

つづく!!

―和田永―

  • 和田 永

    1987年東京生まれ。物心ついた頃に、ブラウン管テレビが埋め込まれた巨大な蟹の足の塔がそびえ立っている場所で、音楽の祭典が待っていると確信する。しかしある時、地球にはそんな場所はないと友人に教えられ、自分でつくるしかないと今に至る。大学在籍中よりアーティスト/ミュージシャンとして音楽と美術の間の領域で活動を開始。オープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するバンド『Open Reel Ensemble』を結成してライブ活動を展開する傍ら、ブラウン管テレビを楽器として演奏するパフォーマンス『Braun Tube Jazz Band』にて第13回メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞。各国でライブや展示活動を展開。ISSEY MIYAKEのパリコレクションでは、現在までに7回に渡り音楽を担当している。2015年よりあらゆる人々を巻き込みながら古い電化製品を電子楽器として蘇生させ合奏する祭典を目指すプロジェクト『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』を始動させて取り組む。そんな場所はないと教えてくれた友人に最近偶然再会。まだそんなことやってるのかと驚嘆される。