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【すみだ巡業vol.10】「ほくさい音楽博」体験会 義太夫編フォトレポート

今年の「ほくさい音楽博」は、音楽家とともに、子どもたちのもとを訪れる体験会からスタート。「すみだ巡業」と題して、全10回にわたって、すみだの各地を巡ります。

今年巡業シリーズ最後の体験会は「義太夫」。

2023年9月16日(土)立川児童館にて義太夫体験会を開催しました。
当日は児童館で、すみだゆいま〜る食堂(子ども食堂)がオープンしていたこともあり、美味しそうなカレーの匂いが漂う中で準備がスタート。

「義太夫体験」は、前回に引き続き太夫の京之助先生と義太夫三味線の弥々先生です。

本日のお題は、安珍さまと清姫さまの恋物語「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)渡場の段」の一部を体験。
「恋♡」という響きに小学生は最初はむずがゆさを感じている様子でしたが、京之助先生が描いた可愛らしい安珍さまと清姫様と川渡りの船頭さんのイラストを元にまずはストーリーの説明を聞き、京之助先生と弥々先生の迫力のあるお手本に聞き入りました。

そこから一転、「義太夫はね、声を使い分けて演じるから、男性でも女性でも子どもでも何にでもなれるところが楽しいところなんだよ」というお話を聞くと、とたんに子どもたちの目がキラキラとしはじめました。

「男の子には、自分が好きだなと思う女の子になって清姫を演じてね」
「女の子には、好きな子に伝えるように清姫を演じてね」

はじめこそ、そんな言葉にキャッキャとしていていましたが、魔法がかかったように、子どもたちの可愛い清姫様の声が体育館に響きました。「安珍さま~♡♡♡」
沢山の♡が見えました♪

みんなで立って腹にグッと力を込めて出す声は、最初こそ恥ずかしさに満ちた声量でしたが、なかなか意識して声を出す体験がないので、声を出せる状況を楽しむ声に変化していきました。
最後、可愛い清姫様が怒りで蛇に変わってしまうあたりでは、先生の迫力に子どもたちの勢いも増します。
声での変化を存分に楽しめたところで、あっという間に時間は過ぎてしまいました。

最後は三味線の話にも子どもたちは食いつくように耳を傾けていました。
何よりもビックリしていたことは、三味線は動物の皮でできていて、これは「犬」の皮でできていますとお話くださったときです。
「犬」と聞いた子どもたちのギョっとした顔と空気感もまた忘れられない場面でした。

伝統を重んじる世界では三味線の皮もそうだけど、太夫が扱う本も同じく、この中に書かれている話は長きに渡って代々繋げてきてくれた昔の方々に対して感謝して扱う必要がある。
なので、絶対に道具をまたがないし、絶対に道具をそのまま床に置くこともしないで大切に扱っていますという話も聞くことができました。そして、それを聞く子どもたちのまなざしはとても真剣でした。
改めて、伝統や教えをきちんと伝えていくことは大切なことであると思えた時間でもありました。

ところで義太夫って音楽なの?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、浄瑠璃などでも伝わる立派な伝統音曲です。
太棹のどっしりとした三味線の音に重ねて、声を通して老若男女だけでなく、時には動物までをも演じて語る音楽なのです。
子どもたちにとっては少し馴染みが薄い芸能かとは思いますが、とても趣があり、物語の内容を事前にわかると大人はもちろん、子どもたちの心にも響く日本芸能です。

色々な音楽を通じて、これからも沢山の子どもたちと一緒に楽しい時間を重ねていきたいと思います。

実施日:2023年9月16日(土)12:30〜13:20
会場:墨田区立 フレンドリープラザ立川児童館 3階 体育館[墨田区立川1-5-2]
講師:竹本京之助、鶴澤弥々